東大生と小学生の脳内シェアハウス

自閉さんのよもやま話 #1


世紀の大発見
ぼくは以前、連載の第4回で知能検査(WAIS-IV)のことを書きました。そのときは「本当に知的障害はないのだろうか?」という目線で、どこかもやもやとした気持ちを抱えながら書いていたように思います。

でも最近、障害年金の診断書を主治医の先生に書いてもらい、その内容を目にしたとき、ぼくの生きづらさの「本当の理由」がようやく分かったのです。ぼくにとっては、まさに世紀の大発見でした。

本当は連載の続編としてエッセイに書こうと思ったけれど、書いているうちに内容が深くなり、じっくり丁寧にお伝えしたくなったので、気長に語れる「よもやま話」として共有できたらと思います。


診断書で見つけた衝撃のギャップ
実は、第4回の連載を書いている数ヶ月前のぼくは、「全体IQ」というひとつの数字だけに気を取られていました。

しかし、診断書に書いてあったのは、全体IQよりも「得意と苦手の差が大きく開きすぎているから、この人は生きにくさを感じている」という衝撃の理由だったのです。

医学的な詳しい説明はここでは省略しますが、一般的に得意と苦手の能力差(ディスクレパンシー)が15ポイント以上離れていると、日常生活で生きづらさを感じることが多いそうです。もちろん個人差もありますが、一般的にはそれがひとつの目安になるとのことでした。

では、ぼくの能力差はどうでしょうか。

得意な処理速度は、124。
苦手な言語理解と知覚推理は、80。

その差は、なんと44ポイント。

15という基準を、3倍近く超えています。「そりゃあ生きづらさを感じるよ」と先生も説明してくれました。

確かにぼくは、一度作業をやり始めると、不器用ながら超高速でやり遂げる特殊能力を持っています。だけど反対に、文字の読み書きはうまくできないし、人が言っていることも難しくてすべて理解しきれないのです。

ぼくの頭の中ではたくさんの言葉が渦巻いているのに、それを言葉として外に出すケーブルが切れているような感覚。それこそが、ぼくの得意と苦手の差で起きていたことなのだろうと、1日を生きていくだけで疲れてしまう理由にとても納得がいきました。


頭の中の東大生と小学生
診察のとき、先生はこんな例え話をしてくれました。

「拓海さんの頭の中には、正反対のふたりが同居しています。ひとりは東大生、もうひとりは小学生です」

東大生な拓海さん(処理速度124)は、タイピングや頭の回転が速く、爆速の処理能力を持っています。

小学生な拓海さん(言語理解・知覚推理80)は、読書をしたり、文字を書いたり、言葉をまとめたり、お話しするのが苦手。一度にいろんなことが起こると焦ったりパニックになってしまいます。

「そして、その正反対なふたりがときに喧嘩をする。その喧嘩こそが、拓海さんの生きづらさなんだよ」と先生は教えてくれました。

そう思い返すと、ぼくは昔から東大生の自分が「なんでこんなこともできないんだ!」と小学生の自分を責めて、頭の中で喧嘩ばかりさせていたなと気づきました。


ふたりに優しく生きるコツ
正反対のふたりが自分の中にいることを知ったぼくは、これからは喧嘩をさせるのをやめて、ふたりとも居心地よく過ごせる環境を作ろうと決めました。お互いに優しくなろうと考えたのです。

ぼくが考えた優しさは、こんなことです。

東大生のぼくへの優しさは、タイピングや集中力を存分に発揮できる環境を作ってあげること。
小学生のぼくへの優しさは、読書や複雑な作業を無理させず、自分のペースで休ませてあげること。

まだ具体的にどうしたらいいのかは手探りで、できることからやり始めてみている段階です。まだ大きな実感はないけれど、考え方を少し変えてみたら、なんだか心が軽くなった気がします。


さいごに
ぼくは、生きづらさを感じるすべての人、特にぼくと同じ世代の若者にこそ、このメッセージを伝えたいです。

上手くいかない日があっても、それは努力不足やあなたのせいじゃないんだよ、ということを知ってほしいのです。

そしてぜひ、今日も自分の中の同居人に、「今日も頑張ったね、お疲れさま」と優しく声をかけて、自分を大切にしてあげてください。

自分を大切にすれば、今まで見えてこなかったものが、きっと見えてくるはずだから。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!